2011年8月29日月曜日

小暮君に恥ずかしくない生き方をできているか?

私が東大病院の研修医(24才)のときに、小暮君という高校生を担当しました。難治性の急性リンパ球性白血病で既に入退院を繰り返しており、私の半年間の担当後も、徐々に退院している時期が短く、入院が長くなっていきました。しかし、彼は明るく素直な性格で、大学に向けた勉強も続けており、内科のスタッフ全員に愛されていました。私も退院中にご飯に誘ったり、入院したと聞けば栃木(自治医大)から見舞いにでてきたりしていましたが、数年後の10月に亡くなりました。その日、何も知らない私がのんびりバスから降りてくるまで、ご両親は亡くなった息子さんと一緒にずっと病院の裏で待っておられました。それ以降、10月になるとお母様にハガキを書き、丁寧なお返事をいただくことが20年以上続いています。一人息子を亡くすことが如何につらいかは、子供を持って改めて実感しています。
私は結局、血液学ではなく腎臓学を専門にしたわけですが、 10月が近づく度に、彼に恥ずかしくない生き方ができているか自問します。すぐに役に立つのは無理でも少しでも科学の発展に寄与できているか、怠けていないか。あれから20年以上たっても自分はほんの少ししか進んでいない、もっと急がねば、と思わせられます。

2011年6月28日火曜日

成果とは打率である

最近気に入っているドラッカーの一節です。
成果とは百発百中のことではない。長期のものである。間違いや失敗をしないものを信用してはならない。それは無難なこと、くだらないことにしか手をつけないものである。
成果とは打率である。人は優れているほど多くの間違いをおかす。優れているほど新しいことを試みる。


打率が低いのは論外ですが、頭が良い人はいろいろ考えてやらない理由を挙げがちです。しかしその予測を越えたところに生命科学の本当の面白さがあります。やらない理由を100挙げるよりまずやってみることが大事。

寺田寅彦も同じことを言っていると思います。
科学者は頭が良いと同時に、頭が悪くなければならない。

2011年3月27日日曜日

論文はgoogle readerで読む

これだけ論文雑誌が多いとフォローするのは大変です。top journalに絞っても、そのサイトを定期的に訪問するのはつい忘れがちです。しかし、これらにはフィード(RSS)がついているので、これを使ってgoogle readerで読めば1カ所のサイトでの管理が可能です。どのPC(あるいはsmart phone)からでも未読既読の管理ができ、ざっと目を通して印をつけておきあとで読み返すなど、劇的に楽になります。かつ自分自身のdatabaseができあがります。
Pubmedでkeyword検索した際に結構いいリストになったと思った際には、それをRSSとしてgoogle readerに登録すれば、その条件で新しい文献が自動的に追加されていきます。my NCBIにも同様の機能がありますが、これも全部google readerにまとめるということです。詳細は下記に載っています。

http://togotv.dbcls.jp/20101104.html

scienceは自分だけのものではない

研究において最も重要な要素は独創性です。腎臓発生をここまで掘り下げて研究するラボは稀なので、それが実現可能です。他人が真似しようとしてもそう簡単にできるものではありません。だから自分の研究を秘密にする必要はありません。オープンに腹を割って話すことで、他の研究者に刺激を与えることができるし、信頼関係が生まれて新たなヒントをもらえることもある。そうやってサイエンス全体が発展することが、最終的には患者さんにとってもメリットになります。真似する人がいても、自分がもっと先に行けばよいのです。それができるだけの実力をつけることが大切です。

開設にあたって

熊本大学発生医学研究所 腎臓発生分野教授の西中村です。
腎臓発生再生研究に必要な心構え、方法、知識など、思いついたときにUPしていきたいと思います。ブログ初心者なのでしばらく試運転です。